エッセイ

ハチロクのすゝめ

2023.02.24

 みなさんの好きな曲にはどんな共通点があるでしょうか。

ボーカルの声がかっこいい、アップテンポ、エモい感じ……。やっぱりバンドサウンドが一番?いやいや、打ち込みの音が心地いいんだよ……。いや、ギターは“レスポール”、ベースは“ジャズベ”、ドラムは24インチのバスドラで…

 みなさんにも“こんな感じの曲が好き”という好みがあり、並べると何らかの共通点があるはずです。

 いつものように好きな曲を聴いていたある日、私は世紀の大発見をしました。そう、私が気に入る曲は「ハチロク」だったのです。ハチロクとは「8分の6拍子」のことであります。

音楽理論はムリ!と思った方も読むのをやめないでください。4拍子とか3拍子という言葉を音楽の授業で一度は聞いたことがあると思います。私たちが普段耳にする曲の半分以上は4拍子の曲でしょう。例えば、みなさんも1度は歌ったことがある『世界に1つだけの花』。その次に多いのは3拍子の曲。世界で一番有名な3拍子は『ハッピー・バースデイ』ではないでしょうか。4拍子と3拍子の違いは分からなくても無意識のうちに私たちはリズムに乗れているのです。

 では8分の6拍子とは何か?ずばり「1小節に、8分音符が6つ入る拍子」です。さっぱり分からない。と言うことで、拍子について音楽的に理解することはあきらめましょう。8分の6拍子とは「つ・たかたー つ・たかたー」です!ぜひ「つ・たかたー」と口に出してみてください。「つ」で1回止まってから「たかたー」といくところが最大のポイントです。ギターで弾くと普通の弾き方より少し難しく、歌いながら弾くには慣れが必要なリズムですが、弾けるとても気持ち良いのです。4拍子の曲よりもパッションを感じることができます。

 最もよく知られているハチロクの曲は、中島みゆきの『時代』だと思います。《まわるまわるよ 時代はまわる》歌詞の通り、何となく時代が回っている感じがするのはハチロクのおかげではないでしょうか。一見普通に感じるかもしれないですが、リズムに意識を集中させてみるとちょっとした違和感に気づくはずです。

back numberの『瞬き』も8分の6拍子です。“幸せとは”という堅苦しい出だしであるにも関わらず耳なじみが良いのは、ハチロクの少々強めなギターのストロークが生む疾走感のおかげではないでしょうか。『高嶺の花子さん』とか『ヒロイン』などの代表曲と並べて聴いたときに、新鮮な感覚を楽しむことができます。

 是非ともみなさんに聴いてもらいたいハチロクの曲は、斉藤和義の『月光』です。私はこの曲でハチロクの魅力を知りました。『月光』はかの有名な『やさしくなりたい』の次に発表された楽曲です。初めて聴いた時に“熱さ”に圧倒され、すぐにでもギターをかき鳴らして熱唱したいと思いました。主人公の心の叫びともいえる歌詞が力強いギターに乗って次から次へと繰り出される斉藤和義の“熱い”部分が感じられる1曲です、直接的な応援の言葉はないけれど、つい月に手を伸ばしたくなる。弾き語りバージョンの『月光』は10割増しくらいで素晴らしいので是非とも聴いてほしいと思います。斉藤和義はハチロクを得意とするアーティストなので他にも名曲があります。《ビルの屋上から男が飛び降りようとしている》という衝撃的な出だしから始まる『時が経てば』は、小説のような一曲です。語るように歌うことができるのがハチロクの特徴であり、その利点を最大限に生かしていう1曲です。《がんばれ 負けるな がんばれ もうちょっとの辛抱だよ》といった直接的な応援の言葉が珍しく使われていますが、絶望的な状況から始まるこの曲における《がんばれ》はいつもと違う響きがあります。

 音楽の魅力を言葉で伝えることはとても難しいです。ハチロク魅力も到底伝えきることはできません。だからこそ、ここで紹介した楽曲だけでも是非聞いてみて欲しいです。ハチロクのおかげで、アーティストの熱い思いがより伝わってくると思います。(N)


N

マスコミュニケーション学科4年生。写真は所属サークルでのライブ中のもの。好きなアーティストは斉藤和義。最近は山下達郎の良さを知る。好きなアルバムは斉藤和義「55STONES」、ユニコーン「UC100V」、ザ・クロマニヨンズ「SIX KICKS ROCK&ROLL」など。