エッセイ

座☆成城①―「竹の子族」という制服―

2022.04.27

「座」には、「集会の席」という意味があります。学生たちが興味の惹かれるままに調べたことを発表するのが、この「座☆成城」です。皆で集まり、様々な視点から、物事を眺めてみませんか。第一回は「制服」。高校時代までは身近であった制服を、個性あふれる観点で考えてみましょう。

竹の子族は1980年代、代々木公園や原宿周辺で「派手な身なり」をして踊っていた若者の集団を指す言葉です。今回はこの「派手な身なり」が統一された格好という意味で制服のような役割を果たしていたのではないかと考え、制服というテーマの一種の事例として竹の子族を取り上げます。

1.竹の子族の誕生とその性格

はじめに竹の子族という名前の由来について、「どうして竹の子?」と思った方も多いはず。実は竹の子という名前の由来は若者が衣装を『ブティック竹の子』というお店で買っていたことから呼ばれるようになったそうです。

ではそんな竹の子族は実際どのような特徴を持っていたのでしょうか?今回は竹の子族の特徴について衣装のアイテムと色彩、メイクの3つを軸にそれぞれ説明していきたいと思います。

1つ目に衣装のアイテムです。具体的にはハーレムパンツや薄手の羽織、髪飾りなどが挙げられます。特にハーレムパンツは竹の子族にとって欠かせないアイテムであり、全体の下にいくほど膨らんでいるダボダボのズボンのことで、当時の写真や映像を見ても履いている人が多く見受けられました。

2つ目に色彩です。竹の子族が派手と言われる所以も何より色にありました。衣装は主に原色がよく好まれピンクや黄色、水色など今でいうアイドル歌手のステージ衣装のような色彩が好まれていた。この派手な集団の中でいかに目立つか、注目を集めることができるかを競っていました。

3つ目にメイクです。上記の衣装やファッションアイテムといった身につけるものではなく顔という自分の身体を加工、活用して工夫する姿は男女問わずいつもと違う自分を求める気持ちの表れなのでしょうか。竹の子族のメイクは自分を美しく見せるため、オシャレのためにするメイクとは少し異なる、非日常を感じさせるメイクをする人が多かったようです。現代の私たちにとってのハロウィンメイクのような感覚に近いのではないかと思います。また現代は女性だけではなく男性もメイクをするということがそこまで珍しいことではありませんが、この時代は1980年代の日本。当時メイクをしていた男性が抱いていただろう非日常に対する想いや異世界の中の自分を体験したいという気持ちはもしかすると女性より強かったのかもしれません。

2.竹の子族誕生の背景にあるものとは

 はじめに80年代当時のファッション業界を考えた場合、竹の子族はブランドやコレクションに対するアンチテーゼとして生まれたのではないかということです。70年代以降、日本人デザイナーが世界のコレクションにおいて頭角を表すようになり、80年代もその流れは衰えず81年には山本耀司や川久保玲がそれぞれ「ヨウジヤマモト」「コムデギャルソン」でパリコレに出場しました。彼らが手がけた穴の空いた加工やアシンメトリーなデザイン、ダークな色彩を基調とした服は黒の衝撃と言われるほど世界で高い評価を受けたそうです。このような背景を踏まえると、竹の子族の身にまとう色彩がダーク系とは正反対であったことから、当時のファッション業界のアンチテーゼとしての機能をなしていたのではないでしょうか。つまりファッションという身近な自己表現が、コレクションやブランドといった権威あること・ものに評価されるという体系的なシステムに反発する、彼らなりの行動だったのかもしれません。

 2つ目に80年代当時の社会背景です。当時の社会状況を顕著に表している言葉にこんな言葉があります。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」。これはお笑いコンビのツービートのギャグとして話題になり、80年の流行語大賞となりました。本来この言葉の意味は禁止されていることもみんなでやれば抵抗なくできるという意味ですが、私はこの言葉は竹の子族の出現にも言えるのではないかと考えました。つまり、「派手な服を着て奇抜なメイクをすることは禁止されていることではないけれど、少なからず勇気はいることで恥ずかしいことも一緒にする仲間がいればできる」、という群集心理をついた言葉が流行語になった社会だからこそ、竹の子族は出現し、なおかつ現在でも歴史に残るほどの大きな風俗の一種になったのではないでしょうか。(I)

参考文献

ニッセイ基礎研究所, 「日本で死語となった「赤信号みんなで渡れば怖くない」が今なぜ中国で復活したのか?」, (2021年12月19日取得, https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=40385?site=nli).

ARTOGUE, 「もんぺから、Kawaii文化、サステナブルな近未来まで、日本のファッション文化を包括的に紹介する世界初の大展覧会「ファッションインジャパン1945-2020――流行と社会」が開幕!」,(2021年12月21日取得, https://www.artlogue.org/node/8817).BEST TIMES, 「ギャルソンとヨウジヤマモトの衝撃〜1980年代〜【5分でわかる国産ブランドの興亡史(2)】」, (2021年12月19日取得, https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/8482/).