読みもの

卒論インタビュー―図書館の空間変容―

2021.11.10

インタビュアー:ムラカミ(文芸学部マスコミュニケーション学科2年)

インタビュイー:T(文芸学部マスコミュニケーション学科4年)

1 本を貸すだけの建物って強烈

T:卒業論文のタイトルは「図書館の空間変容――空間の省略によるデータの変容を通じて」です。図書館という空間が現代においてどういう役割を果たしているのかってことを研究したよ。

ムラカミ:確かに最近は、電子図書館みたいなものや、おしゃれな図書館もありますよね。

T:そうだね。そういう空間が持つ役割は、今までの図書館の持ってた役割から捻出されたものなのか、または新しく出てきたものなのかっていうのを、フィールドワークを踏まえて考察したんだ。

2 本との出会い

ムラカミ:図書館をテーマにされたくらいですから、やっぱり昔から本はお好きだったんですよね。

T:中学生の時に、『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜1』っていう小説を読んだのがきっかけだね。図書委員になったり、本で読んだことを表現したくて放送部に入ったりもした。それで大学でも何か本に携わりたいなって思って、図書館のライブラリーサポーター(LS)をやったんだけど、それで本から図書館にも興味の幅が広がっていったって感じかな。

ムラカミ:図書館そのものに興味を持ったのは大学生からなんですね。

T:それまでは普通に本を読むこと自体への興味が強かったんだけどね。大学2年で履修した、新倉先生の授業が大きかった。

3 図書館という空間

T:その授業で、新倉先生にその都市に存在する図書館の歴史と現在を調べると面白いんじゃないって言われて。それで調べてみたら想像以上に面白かったんだよね。あとは図書館司書の資格勉強を大学3年から始めたことが大きいね。

ムラカミ:図書館極めてますね。

T:この勉強をしていくなかで、図書館が抱える問題に疑問が移行していったんだ。

ムラカミ:最初から図書館の空間に焦点を当てて書こうとしてたわけじゃないんですね。

T:そうだったね。それに、4年の夏に『ヴァイオレット・エヴァーガーデン2』っていうアニメ映画を観たんだけど、それが大きな転機だった。その映画の中では手紙が重要な要素になってるんだけど、手紙って何世代にもわたってずっと保管できるでしょう。そういうのは図書館にも共通してて、図書館も本っていう誰かが書いたものを、ずっと保管してきて、何世代にも渡って借りられるようにしてるっていうのが似てるなあって考えた時に、図書館の持ってる役割は大事だよなって感じたね。

ムラカミ:本もある意味手紙みたいなものですからね。

T:あの映画を見てから絞るなら空間だなって。それで、最終的になんで図書館で人は本を選ぶんだろう、みたいなところを確認していこうとしたのが、卒論のテーマを決める流れかな。

4 喋れない図書館、眠れない図書館

ムラカミ:あれ、そもそも去年って図書館開いてましたっけ。

T:春から夏にかけては、     思うようにフィールドワークはできなかったね。空いてたとしても自由に入って本を読む、みたいなことができなくて、色々制限が多かった。

ムラカミ:自分も大学1年の時は、寝るために大学図書館を利用することがありましたからね。

T:調査や観光で来る人もいるから、それを禁じる注意書きがあってね。夏以降から一気にフィールドワークを進めていったんだ。でも、本当に空間ってものに着目して良かったと思う。

ムラカミ:それはどうしてです?

T:もし図書館の中での人の営み、みたいなものに着目してたら     コロナ前と現在だと全然違って、書ききれなかったと思う。

ムラカミ:それこそ自分みたいに寝られませんし、皆貸し借りしたらすぐ帰っちゃいますもんね。

T:ディスカッション用のスペースでも喋れなかった。本当勘弁してくれって感じだったよ。でも、空間に着目してたから、最悪人がいなくても成り立つんだよね(笑)。もちろん影響がなかったわけじゃないけれども。

5 書くのは大変じゃなかったけれど

T:あとは、参考文献とか資料を探すのが大変だった。相当時間かかったね。図書館の空間論って言っても色々な方向性があって、建築様式から捉えるのか、あるいはその中でおこなわれている人の営みから捉えるのか、とかね。定義が曖昧なんだよ。検索してもそう簡単にヒットしなくて。

ムラカミ:情報に溢れる現代でそんなことがあるんですね……。

T:先行研究との比較で自分の論文を進めるのが王道なんだけど、結局クリティカルに俺の先行研究はこれだ!っていうのは最後まで見つからなくて。知り合いに本についての認識を聞くプレインタビューをしたんだけど、それを先行研究として扱ったよ。

それでも楽しかった

ムラカミ:でも、やっぱり楽しかったっていう気持ちの方が大きかったんですよね。読ませていただきましたが、金沢にも行ったとか。

T:そう。コロナ禍だから自分が思っていたほど多くの場所には行けなかったんだけど、一人旅が趣味だから、そういうことと両立できたのは良かったね。あとは、大学の友達と研究について話し合うのが楽しかったね。

ムラカミ:大学生っぽいですね。高校までは勉強のことは話しても、そんなに専門性が高くなかったというか。

T:これは特に3、4年生になってから感じたことなんだけど、自分が研究してることってある程度は自分の中で自信を持っていることだからさ。それについて話し合うのって、自分は自分の考えていることを言葉にするから為になるし、他の人のを聞くのもそれが何か糧になるかもしれないし。言い方が悪いけど、「ちゃんと」会話するようになったって感じかな。

ムラカミ:執筆すること以外にも、大きな価値観の変化があったんですね。

7 卒業論文について

ムラカミ:冨沢さんにとって卒論とは、どんなものでしょうか。

T:自分が大学4年間でやってきたことの結晶かな。大学でやってきた勉強のほとんど全部は卒論に書いたし、俺が図書館とか本に対してどう思っているのか、今まででどう考えてきたのかをまとめたものでもあるからね。

ムラカミ:総括、みたいな感じでしょうか。

T:そうだね。俺の22年間の人生の中で5本の指に入るレベルでしっかり考えてやったことだから、そうやって考えたものを文章に残せたっていうのは大きな経験だったな。今後読み返してみて、自分と興味の対象にどういう関係の変化があるのかっていうことを見つめ直して、学生までの自分を思い起こすきっかけにもなればいいなあとも考えてる。今後この卒論に対して共感するか、嫌みに思うか、そういうのは自分の人生の歩み方次第だろうから、楽しみだね。

  1. リリー・フランキーによる長編小説。2005年刊行。
  2. 暁佳奈による小説、およびそれを原作とした京都アニメーションによるアニメーション。