文芸学部のこと

文芸のいろは ヨーロッパ文化学科2

2021.05.21

はじめに


 今回のインタビューは、大学3年次から4年次にかけて、ドイツのニュルンベルクへ留学したヨーロッパ文化学科在籍の学生にお聞きしました。ヨーロッパ文化学科に関連した学びの記事として、読んでいただければと思います。
 インタビューさせていただいた学生の留学期間となる2019年から2020年は、新型コロナウイルスが流行した時期でもあります。そのなかで、新型コロナウイルスによる影響に関わらず、「留学の真価とは何か」ということについて考えさせられるインタビュー内容になりました。

 できないことが目立ってしまうご時世であるからこそ、今できることを考える。この記事がそのきっかけになれば嬉しいです。卒業年次生として、皆さんの益々の学びを願っております。


2021年3月
成城リテラブル 冨沢瑛介


1、入学の理由

――ヨーロッパ文化学科を志望した理由についてお聞かせください。

阿部 大河(以下、阿部)

 きっかけは、高校生の時に参加した「全日本高等学校選抜オーケストラ・オーストリア公演」(注1)です。バイオリン奏者として高校2年生から3年生の間参加し、オーストリアのウィーンへ行ったのですが、初めて見たヨーロッパの街並み、初めて聞く言語、何もかもが日本と違うところにカルチャーショックを受けました。それがきっかけで大学ではヨーロッパのこと、特に歴史とかを勉強したいなと思ったことが、入ろうと思った理由です。

ーーウィーンといえば、音楽の都で有名ですよね。

阿部

 街中まで音楽で溢れてるし、劇場もいっぱいあって、当時の自分からするとものすごいカルチャーショックがあったというか。ヨーロッパってこんなに面白いんだな、っていう感じでした。 

 この経験がきっかけで今の学科に所属しているし、大学に入ってからオーケストラ(成城大学レストロ・アルモニコ管弦楽団)に所属したきっかけにもなっています。


(注1)全日本高等学校オーケストラ連盟が、毎年春休みに行うプログラム。全国の中学生・高校生を中心に結成するオーケストラ(通称 ウィーン隊)が、オーストリアにある音楽の都、ウィーンでコンサートや交流会を行う。


2、留学を決意した理由について

ーー大学3年次よりドイツのニュルンベルクへ留学したとのことですが、留学しようと考えた理由についてお聞かせください。

阿部

 留学に行こうと思った理由はふたつあります。
 ひとつめは、在学していた高校が国際交流に力を入れていたことです。高校1年生から実際に海外へ行って語学研修をする機会があって、修学旅行も海外でした。そういう環境もあって、留学への関心があったことが理由です。
 ふたつめは、受験の失敗です。浪人するっていう選択肢もあったけど、自分のやりたいことを勉強した方がいいなと思って、進学を選びました。だけどこのままじゃ悔しいから、大学生のうちに、何かひとつ目標を立てようと思ったんです。成城大学の場合、交換留学に基準が設けられていて、試験にクリアしないと留学できないようになっています。そのための勉強と留学を、大学生のうちの目標にしようと思いました。

 ドイツへ留学した理由ですが、ヨーロッパ文化学科はドイツ語かフランス語を3年間履修することになっています。その中で選択したドイツ語に興味を持ったことが、一番の理由です。


3、留学への準備

ーー留学にあたっての準備で、大変だったことについてお聞かせください。

阿部

 一番大変だったのは、間違いなくドイツ語の勉強。これに尽きると思います。
 まず成城大学でドイツへ交換留学するためには、ドイツ語検定2級を取らないといけないんです。結構ハードルが高くて、留学期間が3年次から4年次だから、2年次の冬までには2級を取らないといけない状況でした。
 大学に入ってからドイツ語の勉強を始めたので、ドイツ語に触れ始めてから2年以内に、2級に合格するぐらいのドイツ語力をつける必要がありましたね。 

ーー大学での勉強だけでは、2級にたどり着くことは難しいのでしょうか。

阿部 

 そうですね、試験勉強は基本的に独学でした。参考書を買って、ひたすら空きコマの時間に勉強するっていうのを続けていた感じですね。わからないことがあったら、成城大学の先生に聞きにいっていました。

ーー試験勉強以外に準備したことはありましたか。

阿部

 成城大学にも交換留学生が来てるので、その留学生が参加している国際交流イベントに積極的に参加してました。成城大学には国際交流サポーターがいて、その人たちが色々な国際交流のイベントを開いているので、それに参加した形ですね。
 参考書で勉強できることには限界があるから、勉強しきれない感覚的な部分、コミュニケーションの取り方とかに慣れたのは大きかったと思います。留学前に自分の視野を広げられるいい機会を頂きました。


4、留学中の生活について

ーーでは、留学中のことについてお伺いいたします。まず、留学中の生活サイクルについてお聞かせください。

阿部

 午前中は大学に行って講義を受けていました。午後は予定を空けて、Tandem(注2)を行っていました。日本語だと言語交換学習が一番近い意味になると思います。
 Tandemでは、日本語を学習したいドイツ人パートナーを決めて、カフェや図書館でパートナーと一緒にドイツ語のわからないことについて教えてもらったり、雑談したりしました。逆に自分は、日本語を勉強しているドイツ人に対して、日本語を教える側として話をしました。

 ーーお互いに語学を教え合える環境がある、というのはいいですね。

阿部 

 正直なところ、Tandemが1番ドイツ語力を伸ばせたなと思いました。
 パートナーも日本語を勉強してる人なので、こちらに興味がある中で会話ができるのが大き勝ったと思います。例えば日本語で「うざい」ってどう言うの? みたいな、ドイツ語ではうまく聞くことのできないことについても教えてもらえました。

(阿部さんが修学中に在籍した、フリードリヒ・アレクサンダー大学)


(注2)お互いの言語を教え合う学習行為のこと、それ自体を指す言葉。https://www.tandem.net/ja(Tandem HP)


5、ドイツの文化について

ーー日常会話の中で気がついた、ドイツの文化のことについてお聞かせください。

阿部

 あんまり日本人が想像してないところだと、ドイツは環境への意識がものすごく高いなと思いました。それは都市によって若干違ってくるのですが、留学先で所属したオーケストラで、そう思ったエピソードがありました。
 そのオーケストラは7割くらいが高校生で、残りの3割が大学生でした。ドイツの若者たちと接する機会が多いコミュニティだったのですが、環境のことでびっくりしたのは、メンバーの高校生達がInstagramのストーリー機能で「Fridays For Future」(注3)を取り上げて、参加の呼びかけをしていたんです。名前の通り、毎週金曜日に若者たちが集まってデモ活動をしていました。
 あと、飲み会に行っても、突然環境問題の議論になるんですよね(笑)。

ーーえぇ、そんなことがあるんですか。すごく勉強になる飲みニケーションというか(笑)。

阿部

 ドイツ人はディスカッションが好きというか、教育的な面から議論するのが好きで、よくそういう状況になっていました。気がついたら環境問題の話になっている、みたいなことがあって。ドイツでは16歳からお酒が飲めるから、その議論に高校生も加わってたりしていたことも影響して、若者の環境問題に対する意識は特に高かったのかなと思います。

(他国の留学生とおこなった、野外での飲み会の様子。ブラジル、アイルランド、モロッコ、ポーランド、スペインからの留学生と共に時間を過ごした。夜は基本的に飲み会があり、日曜はホームパーティーが開かれる。)


(注3)「Fridays For Future」とは、スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリを発端とする運動。世界中の若者を中心に、このムーブメントに共感する人が現れた。https://fridaysforfuture.jp/(「Fridays For Future」 HP)


阿部

 逆にちょっと質問したいのですが、ドイツってどんなイメージがありますか? ドイツ人の外見的なイメージとか。

ーーどちらかといえば、白色人種の方が多いんじゃないかと思います。

阿部

 同じで、自分もドイツっていうと白色人種で、目が青くて、金髪でガタイがいいみたいな想像をしていました。それで、現地に着いてから気が付いたことなんですが、街中を歩いてる半分ぐらいの人は中東系の人たちなんですよ。

ーーなるほど、ドイツより東側の国から難民や出稼ぎで来る人たちが多いということですかね。

阿部

 そうです、難民が今増えていて、ドイツにだいたい100万人くらい移動しているみたいですね。だから、思っていたよりも人種が多様でびっくりしました。街中を歩いていて半分ぐらいはドイツ語だけど、もう半分ぐらいはトルコ語とか、アラビア語みたいに他言語が聞こえていました。

ーーEUという枠組みの特色のようにも思えます。他のヨーロッパの国も同じような状況なのでしょうか。

阿部

 移民の数は全体的に多いと思います。ただ、そのなかでもドイツは難民の受け入れ数が多い印象がありますね。他の国だとベルギーへ旅行で訪れたのですが、ドイツほど人種が多様な印象はなかったので、逆にびっくりしました。ドイツでびっくりしたから、ベルギーもそうなのかなと思っていたら、ベルギーは思っていた通りなんだ、みたいな。


6、ドイツ語に対する意識について

ーー大学や国際交流センターで触れてきたドイツ語と、実際に現地に行って、大学やTandemで触れたドイツ語でイメージの違いはありましたか。

阿部

 ドイツ語検定2級まで勉強していたので、ある程度は自信を持って留学したんですけど、喋るのが早すぎて、まず聞き取れなかったです。とりあえず打ちのめされました(笑)。

ーー打ちのめされたと思ってから、わかるようになってきたタイミングはありましたか。

阿部

 変化が訪れたのは、留学してから半年ぐらい経ってからでした。地道にTandemを利用して、講義を受けて、という積み重ねも大事でしたが、大きな転機は所属したオーケストラの活動でした。
 オーケストラのメンバーは外国人が自分しかいなくて、他はみんなドイツ人だったんです。だからコミュニケーションも全部ドイツ語で、しかもメンバーはTandemのパートナーとは違って、日本に興味があるわけではないんですよね。だから、全然コミュニケーションが取れなかったです。向こうも若者だから、使う単語が崩れていて、日本語で言う「うざい」とか「ぴえん」とか、そういうスラングの混ざった会話についていけませんでした。
 だいたいオーケストラに所属してから3か月くらい、友達ができませんでしたね(笑)。

ーー3か月は長いですね……。

阿部

 高校生のノリもわからないし、何を話せばいいんだろうっていうのもありましたし。話したら話したで、何を言ってるのかわからない。そういう状況の中でオーケストラの合宿がありました。
 これは本当にキツかったです。一週間オーケストラのメンバーと生活することになって、部屋もその子達と一緒なので、日本語から隔絶された状況でした。でも、逆にその一週間ドイツ語だけの生活を送ったことで、ドイツ語には慣れに慣れたというか、オーケストラの仲間とも仲良くなれたと思います。
 普段の生活の中だと、他の日本人の留学生もいるので日本語を全く使わないわけではないんですよね。仲間の留学生と喋っているときは日本語ですし。その中で、ドイツ人だけのコミュニティで時間を過ごしたのは強烈な経験でした。
 多分、サッカー選手が日本からドイツのクラブに移籍したときと、同じような状況だったんだろうなって思います。日本人のサッカー選手が海外に移籍した後、どうやってコミュニケーションを取って、チームと打ち解けているのか調べましたよ(笑)。

ーー追い詰められていたんですね……。ただ、その一週間があったからこそ、残り半年の留学生活がより楽しめたのだなと、お話をお伺いしていて感じます。

阿部

 その一週間で「なんとかしなきゃな」という気持ちはありました。
 あと、オーケストラのメンバーの中で、すごく自分のことを気にしてくれる人がひとりいたんです。その人が、合宿中に「お前孤立してるけど大丈夫か」って言ってきて(笑)。
 ドイツ人って、ストレートに物事を言うんですよね。オブラートに包んだりしない。それで、「俺はお前をこのオーケストラの仲間として受け入れたいんだけど、俺たちはどうすればいいんだ」みたいなことを言われました。あ、この人は良い人だって思いましたね。

ーー移民の受け入れに関してもそうですが、ドイツの人たちは受け入れることに関して寛容というか、しっかりと考えることを大事にしているんですね。

阿部

 そうですね。高校生のうちから、そういったことを考えるのが当たり前になっているのだと思います。


7、自身の研究について

ーー1年間ドイツで留学生活を送って、卒業は延期制度(注4)を用いて来年度になるとお伺いしています。卒業論文に関しては今年度で執筆を終えたとのことで、その内容をお聞かせください。

阿部

 ドイツ哲学のことについて書きまして、テーマが「全体主義の起源」になります。
 全体主義というのは、簡単に言うとナチズム(注5)と似たような意味合いで、どうしてドイツでナチズム、全体主義が起こったのか、そこから全体主義にはどのような脅威があるのか、という内容を研究して書きました。
 このテーマで書こうと思った理由として、大学で勉強していく中で、何で戦争が起きたのかということが疑問として浮かんでいました。そのことを考えた時に、第二次世界大戦に焦点を当てると、ヒトラーとナチスっていう要素が出てくる。でも、調べてみるとヒトラーとナチスは民主主義国家から生まれているんです。

ーー全体主義というと、社会主義というか、共産のイメージを強く持っています。ドイツの場合はそもそもが民主主義国家であった、ということですか。

阿部
 そうですね。ソ連のような共産党の場合はまた別ですが、ナチスの場合は、ワイマール共和国という民主主義国家から生まれたんですよね。しかもヒトラーは選挙で選ばれて権力を握った人でした。

 では、なぜ人々はヒトラーを選んでしまったのか、その後、ヒトラーが統治したドイツの全体主義的な支配っていうのはどのようなものだったのか、というのを卒業論文で書いています。

ーー留学中に、卒業論文の執筆に活かせた事柄はありましたか。

阿部

 留学を卒業論文に活かせたことでいうと、ドイツってナチスの史跡が沢山残っているので、そういうものに触れられたことは大きかったです。
 あと、デモも沢山見ました。今、ドイツは極右政党のAfD(ドイツのための選択肢)あたりが支持率を上げているんです。それに関するデモが起こっていて、そういった様子から研究に対する刺激を得たりもしていました。

ーー戦時中の過去があったからこそ、「これからは民主主義がちゃんと機能しなければならない」という、民衆の政治に対する意識の高さがある、ということでしょうか。

阿部

 特に第二次世界大戦の歴史認識として、ドイツは加害者意識が強いんです。自分たちが侵略してしまったというところから、学びとして反省していかなければっていう意識が強いのだと思います。高校でも、ナチスのことについては1年間、しっかりと時間をかけて勉強するみたいです。

(実際に見たデモ活動の様子、プライバシーに配慮しぼかし処理)


(注4)卒業要件を満たしている卒業年次生が、国家試験や資格取得のための勉学、または就職活動を理由に利用できる、1年間の卒業延期制度。
(注5)「ドイツのファシズム」と表現される、第二次世界大戦注のドイツで行われた暴力的・専制的な政治支配のこと。ナチスの一党独裁体制を作り上げ、他の政党の解散、ユダヤ人に代表される弾圧、他国への侵略政策などが特徴とされる。


8、今後の予定

ーー卒業延期制度を利用した上での、今後の予定をお伺いしたいです。

阿部

 延期した理由は教職課程のためで、教育実習を受けるということに加えて、大学院の進学を考えています。大学院で何をしたいかというと、ドイツの高校生と関わって、ドイツの教育について学ぼうかなと思っています。
 ひとつ例を出すと、ドイツの高校は授業が午前中で終わって、日本のような放課後の部活動がないんです。部活がない代わりに、多くの高校生は地元のクラブに所属しています。自分が所属していたオーケストラもそのひとつでした。学校の先生から顧問を出すのではなく、しっかりと指導できる人に教わり、勉学とは分けて考える。そういったドイツの教育と日本の教育の違いを大学院で研究しようかなと思っています。
 あとは、成城大学が国際交流の促進を行うというお話をいただいているので、学生代表として、成城大学の学生や成城学園の高校生に対する留学啓発活動にも取り組んでいきます。


9、学生へのメッセージ

ーー最後に、在学生、入学予定の人に向けてへのメッセージをお願いします。特に海外との文化交流や国際フォーラムへの参加、それに関係する勉強を頑張ろうと考えている人達に向けても、ひとこといただければと思います。

阿部

 オンライン留学という、現地に行かずにオンラインで海外の語学学校の授業や、大学の講義を受けるプログラムを最近耳にします。
 ですが、個人的には留学の真の価値はそこではないと思います。留学での学びや体験は教室の外でこそ見られるのではないかと、留学をしたうえで考えるようになりました。もちろんドイツでの講義で学んだことは沢山あります。そのうえで、普段の街の景色とか、街中の人や食べ物、そういったところから得た学びや経験が留学中に一番印象に残ったことですし、得られたものの中で大きかったものだと思います。留学中は毎日新しい発見があるんです。
 確かに、現地に留学するのは簡単なことではないと思います。ただ、もし留学を考えている人がいたら、その選択肢は捨てずに、「現地に行く」ということを自分の選択肢のひとつにしてほしいな、と思います。