読みもの

週末ブンゲイ第2回 「ひとりクリスマスの週末」

2020.12.21

こんにちは、タネイシです。 クリスマスの足音がする季節ですね。 みなさんは誰と過ごす予定ですか? 恋人と、友達と、家族と過ごす人。様々でしょうね。 ですが、ひとりで過ごすのもきっと素敵なはず。

多くの文化・芸術を生んできたクリスマス。 ひとり、その豊かさに触れてみると新しい感性が得られるかもしれません。 そんなわけで今回は「ひとりで楽しむクリスマス」の提案です。 こんなご時勢だからこそ、普段と違う楽しみ方をしてみてはどうでしょう。

(出典:GAHAG)

【日の出とクリスマス】

早起きしてみましょう。賑やかなイメージのあるクリスマスですが、早朝は静かで人通りもまだ多くありません。クリスマスひとりじめのチャンスです。

国立天文台によると、2020年12月25日、東京での日の出は6時49分頃。 冷たい冬の夜空を少しずつ温めていくような日の入りを感じてみるのも素敵ですね。

朝といえば谷川俊太郎が「朝のリレー」(『谷川俊太郎詩集』角川書店,1972)という詩を詠っています。 以下はその中の一節です。

この地球では 

いつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ 

経度から 経度へと

そうしていわば交替で地球を守る 

眠る前のひととき耳をすますと

どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる

それはあなたの送った朝を 

誰かがしっかりと受け止めた証拠なのだ

サンタクロースへの手紙が世界中から集まる、サンタクロース中央郵便局があるフィンランドは日本より約8時間遅れて朝が来ます。 イブの夜に、サンタの住む土地から送られた朝のバトンのようですね。

【季語としてのクリスマス】

俳句に初めて「クリスマス」を季語として使った俳人を知っていますか?

「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」で有名な正岡子規とされています。

(出典:松山市HP)

日本でクリスマスが祝われだしたのは明治の半ば頃。彼は慶応3年(1867年)から明治35年(1902年)までを生きました。クリスマスが日本に浸透していく過渡期にいた人物といえます。彼が作ったクリスマスの俳句の中にこんな一句があります。

八人の 子供むつまし クリスマス

たくさんの子どもたちがクリスマスにはしゃぐ様子が目に浮かぶような歌です。子どもたちの笑顔を運んでくるクリスマスを子規も楽しんでいたのかもしれませんね。

彼にならって、クリスマスを季語に俳句を詠んでみてはどうでしょう。

クリスマスに没入して楽しむのも素敵ですが、客観的に捉えて楽しむのもまた一興です。

【イルミネーションジョギング】

クリスマスといえばイルミネーションですが、カップルばかりの中ひとりで見に行くには憚られます。なので走り抜けましょう。想像してみてください。ライトアップされた東京タワーや、煌びやかなイルミネーションで彩られたミッドタウンを駆け抜けぐんぐん置き去りにしていく……。クリスマスを早送りしている感覚がしませんか。

「走る」という行為は多くの小説の題材になっています。古くは太宰治の『走れメロス』(1940)から、4年前にドラマ化し話題となった池井戸潤の『陸王』(2016)まで。スポーツは文学から遠いものとして捉えられがちです。けれど、そこから生まれる人間模様、心の動き、風景……。スポーツは非常に文学的な行為かもしれません。

実際に走られる方は安全面と密に十分注意してお楽しみ下さい。

(出典:GAHAG)

他にも、クリスマスが題材の本をキャンドルをともした部屋で一日中読み暮らいたり、まだ知らないクリスマスソングを探しにレコードショップへ出かけてみたり、やれることは盛りだくさんです。あなたの「好き」が赴くままに足を運べば、もっと素敵なあなただけのクリスマスを見つけられるのかも。

気兼ねなくひとりクリスマスを歩きましょう。その足取りはいつもより軽やかなはず。

それではよきクリスマスを。