読みもの
町とNew Me! 第3回 「旧猪股邸」
2020.10.02
いつも通っている町なのに、そこには知らないことがたくさんある。
身近な町をもっと知れば、きっと自分の世界が広がるはず。
みなさん、こんにちは。えりかです。
学生の目線で、身近な町の知らない素顔を紹介していく連載「町とNew Me!」。
毎回、町の魅力あるポイントをピックアップしていきます!(取材日:2019年12月17日)
第3回目にご紹介するのは、旧猪股邸。
1964年に文化勲章を受章した建築家・吉田五十八(よしだいそや)氏の設計による建築です。
成城大学から徒歩10分ほどの場所に、静かに佇んでいます。

旧猪股邸にはボランティアスタッフの方がいらっしゃるので、気軽に解説を聴くことができます。取材時にも、そのスタッフの方にお話を伺いました。
旧猪股邸は、労務行政研究所1の理事長を務めた故・猪股猛氏ご夫妻の邸宅として1967年に建てられました。歴史的価値があるとして保存されており、現在は一般公開されています。
設計をした吉田五十八氏とは、近代数寄屋建築で有名な建築家です。静岡県御殿場市にある岸信介邸 (現・東山旧岸邸)を造った方でもあります。旧猪股邸は彼の晩年の作品で、猪股氏は、もともと吉田氏と直接的なつながりはなかったそうですが、彼の建築に魅了され設計を依頼したそうです。
1、1930年創立。労働条件の検討・決定に携わる労使の実務担当者に向けての情報サービス企業として、情報誌「労政時報」を中心に書籍、WEB、セミナー等、数々のサービスを提供している。1949年(昭和24年)に労働省(現・厚生労働省)より財団法人として許可。(一般財団法人労務行政研究所ホームページ https://www.rosei.or.jp/ より)
それではさっそく、この建築の魅力をご紹介していきます!
玄関から入って正面にある居間は22畳あり、左手にある引き戸は庭園に向かって大きく開けられています。

かつて、部屋の真ん中に置かれていたソファに座ると、枠を額縁に見立てて庭が鑑賞できるようになっていたそうです。なんて粋な発想なのでしょう!
そのため、雨戸、網戸、ガラス戸、障子戸の4枚の戸は戸袋にきれいに収納されるようになっており、見た目がすっきりしていて美しいです。
現在はソファはありませんが、同じ高さの視点から、庭を眺めてみてはいかがでしょうか。
取材時は、植物がまだ芽吹いておらず少し寂しさがありましたが、春には、紅白の梅や黒侘助という椿などが咲くのをみられ、秋には、美しい紅葉がみられるそうです。
季節ごとにそれぞれ違った美しさを堪能することができるので、季節がめぐるたび訪れたくなりますね。
次に、食堂に行ってみましょう。ここの床は、桜の木の寄せ木張りになっています。一見、何の変哲もないように見えますが……。

よく見ると、床のパネルが正方形ではなく微妙にひし形になっていることがわかります。
これは、部屋が正方形に近い長方形になっているため、床のパネルをひし形にして、角の頂点がへりに合うように作られているのです。

見逃してしまいそうな部分にも、美しさを追求する工夫を凝らしていることがわかります。
また、浴室のシャワーや手すり、洋室のソファや三面鏡など多くの家具は当時のままになっています。

建物そのものも含め、ほとんどがきれいなまま保存されており、良質なものを丁寧に使っていたことがわかります。
旧猪股邸をめぐってみると、猪股氏ご夫妻の晩年の静かながら洗練された暮らしぶりが感じられるようでした。
猪股邸には、成城大学の正門から徒歩10分ほどで行くことができます。授業のない空きコマの時間で猪股邸に足を運べるのは、成城大生の特権です!ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
ご協力:
旧猪股邸(成城五丁目猪股庭園)
東京都世田谷区成城5-12-19
TEL:03-6407-3311(一般財団法人 世田谷トラストまちづくり)
開園時間:午前9時30分から午後4時30分
休園日:毎週月曜日(但し、月曜が祝日の場合は次の平日)と年末年始(12月29日~1月3日)
入場無料
※現在、 新型コロナウイルス感染症予防対策のため、 ボランティアスタッフの方による解説案内は休止しております。 また、 団体(10名以上)でのご見学の申込は中止しております。