文芸学部のこと

文芸のいろは 文化史学科

2020.09.18

 (インタビューの実施日は2019年11月になります)

 「これまで」の自分と向き合って

――文化史学科を選んだ理由について、お聞かせください。

荒谷理緒(以下、荒谷) 私は実家が福井県なのでお寺や神社によく行ったり、家族一緒に香川の四国八十八箇所霊場に連れていってもらう機会があって、神社とかお寺、御朱印帳を身近に感じながら生活してきました。大学では自分の好きなことをやりたいなと思っていたので、神社やお寺に関する勉強ができる場所はないかと探して、文化史学科を選びました。大学生になってからも旅行先で神社巡りをして、御朱印を押してもらってます。

黒木奈央(以下、黒木) 私は怪談話や不思議な話が好きで、小さいころから『本当にあった怖い話』を見たり、学校の先生がこぼれ話で妖怪のお話をしてくださる事に対して、面白いなぁと思っていました。文化史学科を志望したきっかけはそういうお話が好きだったことに加えて、3年次の学科研修旅行も面白そうだなぁと思ったこともあります。

――『学科研修旅行』では、具体的にどのようなことをするのですか?

荒谷 私たちの場合だと、こけしで有名な鳴子峡1 に行って、街中にあるこけしの街灯に驚いたり、ちょうど紅葉のきれいな景色だったので景色を見たりしました。

黒木 あとは、山形県の山寺2 に行って、何百段もある階段を上ってお寺参りをしたり……。修学旅行と同じような雰囲気の中で、その土地の歴史について学びました。


1、宮城県県大崎市に位置する峡谷。

2、山形県山形市にある天台宗のお山のこと、正しくは宝珠山立石寺。


――今、研究している分野について、お聞かせください。

荒谷 私は、中国における「如来像の複製」の中国化を研究しています。

 如来像がインドから中国に伝わる際に、インドの如来像は着衣が薄いんですけど、中国では上着を着こんだ如来像が多い、という特性があって、これを中国化と言います。なんでそういった中国化が起こったんだろう、ということが気になって、卒業論文で研究しています。

黒木 すごく難しい……

荒谷 いつもゼミナールで研究発表しているときに、難しい話をしてゴメン……!って思いながら話してます(笑)

――中国化について、詳しくお聞かせください。

荒谷 私が中国化について気になったのは、大学2年次の時に「東洋文化史」という講義を受けたことがきっかけです。中国の仏像の話を聞いていた時に「なんでこの仏像は服を着こんでいるんだろう?」っていう疑問が浮かんで、ちょうど講義を担当してくださっていた先生が、その分野を専門で研究していらっしゃっるので、よし、この先生のゼミに入ろう!と。

 中国化についてなのですが、如来像の場合は単純に服が違っていて、まったく服を着ないか、すごく着込んでいるかの二択なんです。インドの場合は胸や腕の筋肉があらわになっているんですけど、中国に移ると、日本人が冬になるとコートやマフラーを着込むのと同じようにモコモコで、身体のラインがわからないようになるんです。その背景としては、政治的要素だったり文化的要素も絡んでいるのですが、誕生した土地による違いが大きくて。政治的観点からは、その当時の皇帝と如来像を重ねて、如来像を皇帝と同じような服装にした、という説があって、文化的観点からは、中国の正装が着込むようなものだったので、如来像も同じように着込ませた、という説を考えてます。どっちが正しいのかは……私の卒論を見てからで!(笑)。

――ありがとうございます。完成した卒業論文がとても気になります……! 

  では、続いて黒木さんにお伺いいたします。

黒木 私は中国の「一人っ子政策」について、始めから終わりまでを見渡して、中国の社会にどのような影響を与えたのかについて研究しています。

 私自身の就職希望先が家族を対象としている所だということもあって、自分の研究とこれからの仕事をつなげることが出来れば、将来役に立つんじゃないかなと思って、一人っ子政策に興味を持ちました。一人っ子政策について調べていくなかで「一人っ子政策によって女性の立場が良くなる」という内容の論文を見つけて、女性が優位ではなかった過去がある中で、男性と女性の立場が五分になるような働きかけが中国で起こっている、ということが気になりました。それに加えて、一人っ子政策を行ったということは、将来的に中国が少子高齢化社会になるということでもあり、状況としては今の日本と同じような側面もあると思ったので、その点も含め研究しているところです。

 一人っ子政策による人間文化の観点も変わっていて、父親像が変わったり、一人っ子だからこそ起こる子どもの「皇帝化」も起こっているみたいで。これから調べ上げていくところではあるのですが、子どもに与える影響や、少子高齢化に対してどのような対策を取るのか……ということをまとめているところです。

――怖い話に関連する研究かと思っていました。

黒木 正直に言うと、私怖がりなんで……

――えぇっ?!

荒谷 怖い話好きなのに?! なんで……?

黒木 怖い話に関しては、メディアを通して自分のペースで見たり考えたりすることが好きなんです(笑)

 就職について

――おふたりは4年次ということで、よろしければ就職活動の事についてもお聞かせ願えますか?

荒谷 私は早い段階で就職が決まっていて……一番最初は3年次の12月でした。その時は間違えてその年の卒業生が受ける面接を受けて、内定をいただいた形でした。

黒木 えっ、そうだったの?!

荒谷 面接の通知が来たので、よし行ってみようと思って行ってみたら「そういえば、この年に受けた3年生は君だけなんだよね」って言われてびっくりしました(笑)

 私は希望の職種を福祉関連に絞っていたので、あんまり面接は多く受けなかったです、最終的に10社くらいだったと思います。

黒木 私は多分遅いほうで、10月に内定をいただきました。教員免許を取っている所なので、教職もいいな、でも一般企業もいいな……と迷っていました。色々な職種の会社を見てはいたのですが、上手く自分のやりたいことが見つけられなくて。でも利益よりも前に人の役に立てることがしたいなと思っていたので、最終的に公益財団系を志望して、内定をいただいた形です。周りのみんなと比べると時間はかかりましたが、悩んだ分だけ、自分のやりたいことが見つかってよかったなって思います。

 「これから」のみんなに向けて

――最後に、文化史学科に興味のある人へ、ひとことお願いします。

荒谷 文化史学科は歴史学、民俗学、文化人類学の三つの分野から選んで研究を進めていくのですが、漠然と「これが好きだからこれを取る」っていう感じで授業を受けても、なにか自分の興味に引っかかるものがあると思います。ぜひ、いろんな授業を受けてみてください。

黒木 学生生活に関してなんですけど、大学に入って「自由の身だ!」って感じると思うんです。でも、自分を律してこなさないといけないことも増えるので、そういうことはきっちりこなしていったほうがいいと思います。それと、文化史学科の授業の中で「これ面白いな」って思ったら、その分野を研究している先生に聞きに行くのがいいと思います。本当に、お茶を飲むっていう気持ちでも大丈夫なので、門を叩いてみるのは大事だと思います。

 Topic インタビュアーのつぶやき

 文化史学科のおふたりは4年次ということもあり、大学における研究について具体的な内容をお伺いすることが出来ました。

 荒谷さんは、お寺や神社が好きだという「今までの自分」が見つけた如来像についての研究を、黒木さんは自分が就く職業という「これからの自分」が見つけた一人っ子政策についての研究を、それぞれなさっているのではないか……そんなことを思いました。きっと、どちらの視点も研究にとっては大事で、加えて自分が「面白い」と思えることを研究しているな、とも思いました。

 「これから研究テーマを決めていく時期だけど、どうしたらいいのかわからない……」という方は、「今まで」と「これから」の自分を見つめなおしながら、何か自分に引っかかるものを見つけてみるのがいいかもしれません。