文芸学部のこと

文芸のいろは 英文学科

2020.02.21

 「これまで」の自分と向き合って

――英文学科を選んだ理由について、お聞かせください。

亀田拓実(以下、亀田) 僕は中学2年生まで勉強に関しては不真面目な生徒で、9教科5段階形式の成績で合計が17ってくらい勉強が苦手でした。そんな時に英語の授業を面白く教えてくださる先生と出会って、その先生のおかげで英語の成績が5まで上がったんです。そのことがあってから、英語って面白いなって思うようになって、英語を勉強することが好きになりました。

 その時の体験がきっかけになって、英語を活用して世界中の人とコミュニケーションを取れるようになりたいなと、そして、自分も英語の面白さを伝えられる先生になりたいなと強く思うようになりました。そうしたなかで、自分自身の英語に関する力をより一層高めるために、また英語の教員免許を取るために、成城大学の英文学科に入りました。

城山亜実(以下、城山) 私はもともと英文学科を志望していたわけではなくて、家庭科の教師になるために国公立大学を志望していました。ただ、センター試験で失敗しまして……。試験が終わった後に、どこか私立大学で受験できるところはないかって探していた時に、成城大学を見つけました。英文学科、芸術学科、マスコミュニケーション学科を受験して合格をいただいたのですが、「やっぱり教員になりたい」と思ったので、英文学科を選択しました。

 ただ、大学に入って、教員コースの講義を受けたときに、先生は大変な仕事なんだと改めて実感して。それに、英文学科に入って英文学を読むことは好きになったけど、英語を突き詰めて人に教えるということまでは私にはできないなと感じました。それで今まで教職の勉強にあてていた時間を他のことに費やせるなと考えたときに、ちょうど第2外国語で中国語を取っていたこともあり興味があったので、大学3年次から台湾へ留学しました。


1、城山さんの受験当時(2016年)は、B方式後期日程に文芸学部が含まれていた。現在は法学部、社会イノベーション学部にて実施


 興味関心はいろんなところから、いろんなところへ

――今、研究している分野について、お聞かせください。

亀田 今は18世紀のイギリス文学について研究しています。その時代の文学は当時の政治や事件などの文化的背景が内容に深くかかわっているのが特徴なのですが、18世紀イギリス文学には題材となった事柄が表立って記されているわけではないので、元となったものは何だったんだろうと考察しながら読み進めていくのが楽しいです。なかでも僕は『ガリバー旅行記』について研究していて、フィクションの物語のなかに、現実に起こった事柄が含まれているというところに面白さを感じています。

 今の研究テーマに興味を持ったきっかけは、その時代の文学を扱う吉田直希先生の講義です。吉田先生の講義は「答えがない」のが特徴なんですけど、何をやってもいいってくらい解釈に対して寛容で、一番面白いこと言った人が優勝っていうような講義の進め方なんです(笑)。それが僕にとっては面白く感じて、吉田先生の影響を受けて、講義もゼミも吉田先生が開講しているものをどんどん受けました。中学生のころから、いい先生とめぐり合えているなと思います。

城山 卒業論文では『ベガーズ・オペラ(The Beggar’s Opera)』、日本語で『乞食オペラ』と呼ばれるものの、諷刺の両義性について研究しています。オペラって言われて私たちが想像するイタリア・オペラみたいな「正統派オペラ」とは違って、『ベガーズ・オペラ』は「バラッド・オペラ3 」って呼ばれているものになります。私はその「バラッド・オペラ」の観点に加え、ロバート・ウォルポール4  への称賛と批判、上流階級と中流階級といった要素の比較から、諷刺の両義性について明らかにするということをしています。

 私自身ミュージカルの観劇が趣味で、ゼミの先生から「演劇関係のほうが興味が深まるんじゃないかな」って言われたのが研究テーマを決めたきっかけでした。「バラッド・オペラ」は私の中でミュージカルに近いものを感じたんです。それに、演劇が好きだからこそわかることについて考えられるからいいなって思って。というか趣味が絡んでないと研究も頑張れないので……(笑)。


2、ダニエル・デフォー(Daniel Defoe)やジョナサン・スウィフト(Jonathan Swift)などが活躍した文学の時代。詳しくは成城大学シラバス「英語文学アカデミック・ベイシックスⅣ」を参照

3、当時のイギリスの民謡や流行していた歌謡から曲を借用し、短い曲とセリフで構成されたオペラ

4、18世紀イギリス(当時グレート・ブリテン王国)の政治家、首相


――将来のこと、今自分が気になっている仕事についてお聞かせください。

城山 私は1年間留学していたので、就活は来年度からすることにしています。希望する業界についてはまだ絞っていないんですけど、英語と中国語を勉強してきたので、仕事のどこかで学んできた言語を活かせたらいいなって思っています。中国系企業と日本系企業でこだわりはないけれど、やっぱり仕事をするなかで学んできた言語を生かせる機会がある企業がよくて、できれば国内で働きたいな……って思いもあるので、今考えているのは中国系企業の日本法人です。会社側で言語力支援をしてくださるところもあるので、まだまだ言語の勉強したい私にとってベストだなと思っています。

亀田 教師になりたくて大学に入ったんですけど、今、進路は3つの方面で悩んでいます。まず、教員免許を取得して先生の道に進むこと。次に、就職して企業に勤めること。最後に大学院に進学することです。アルバイト先の大学院生の先輩に聞くと「2月くらいには進路を決めないといけないよ」って言われたので、とても悩んでいます。

 一般職についてはマスコミ関係で、そのなかでもラジオ業界が気になっています。受験期にラジオを聴いていたのがきっかけで興味を持ちました。ひとりで勉強していてもラジオなら誰かの話が聴けるので、ひとりじゃないって感じられるのがいいなって思ったんです。こうやって自分が感じたことを誰かに伝えられるようなお仕事がしたいなって思って、ラジオ業界を考えています。

 大学院を考えている理由は二つあって、人生は一回しかないから、大学で興味を持ったことについて大学院でさらに研究したいなって思ったことがひとつです。それと、これは他大学に行ったときに感じたことで、大学の人にとどまらず、いろんな人とかかわりあいながら学びを深めていけたらいいなって思ったことがもうひとつです。

 「これから」のみんなに向けて

――最後に、英文学科に興味のある人へ、ひとことお願いします。

亀田 これは英文学科のある先生が仰っていた言葉なんですけど、「文芸学部は遊ぶ場所だ」というものをお伝えしたいです。遊ぶって言っても、ただワイワイ遊ぶってことではなくて、自分の興味のあること、研究したいことをとことん突き詰めたり、自分のやりたいことに対して積極的になっていくのが大学っていう場所だよ、と仰っていました。その言葉に共感を覚えたので、今も自分の中に残っています。

城山 もともと志望していなかった学科だったからこそ、英文学科に入ってから「英語のなかでここは好きだ」っていうことが見つけられました。英文学科で過ごす4年間は、もちろん英語が大好きで突き詰めることもできるし、私みたいにいろんな道や今までなかった興味を探すこともできるんじゃないかなと思います。大学生活は人生の夏休みって言われてるけど、それは違うぞと私は言いたいです。まだ私自身、将来の道が見つかってないんですけどね(笑)。

亀田 (笑)。

 Topic インタビュアーのつぶやき

   英文学科のおふたりへのインタビューから、大学という場の柔軟性について考えさせられました。

   大学生活は、自分次第でいかようにも変えられる部分が多いです。インタビューにあったように大学4年間は「人生の夏休み」と言われるほど自由ですが、それゆえに自分の興味関心の赴くままにいろんなことを手を伸ばすことも、休みとして消化することも、すべては自分の行動力にかかっていると思います。

   大学4年間で何を悩み、どう動くのか。おふたりのインタビューはその実情が強く感じられました。